がんの転移を抑制する酵素が発見されたことが、1月21日付の米科学誌「サイエンス・シグナリング(電子版)」で発表されました。
この画期的な発表をおこなったのは、尾池雄一教授率いる熊本大大学院生命科学研究部の研究チームです。
現時点では、がんの転移を防ぐ薬はごく限られているため、今回の発見によって新しい抗転移薬が開発される可能性があるのではないかと大きな注目を集めています。
今回その効果が確認されたのは、人間の体内にある「TLL1」という酵素です。
「TLL1」は、がん細胞から多く分泌され、がん細胞の動きを活発に転移や浸潤(周辺の組織に入り込むこと)を促す「ANGPTL2」と呼ばれるタンパク質を切断し、がんの進行を遅らせるとともに、癌の転移も抑制します。
熊本大研究チームは、これまでに「癌転移及び発癌におけるANGPTL2の意義に関する研究」「癌及び生活習慣病とヒト血中ANGPTL2濃度ダイナミクスの連関に関する研究」などをテーマに、ANGPTL2の仕組みについての研究も行ってきました。
今回は新たに、ヒトの骨肉種細胞をマウスに移植する実験を通じて、ANGPTL2の遺伝子ががん組織内の環境の変化に伴う「DNA脱メチル化」という過程を得て活性化することも解明しています。
今後は、TLL1の活性化が人体に何らかの影響を及ぼさないか、TLL1を活性化させたり分泌量を増やしたりするにはどうすればよいかといった点に焦点を当てた研究が行われる予定です。
その結果、がんの進行や転移を食い止める新たな薬が開発されれば、今までのような放射線や抗がん剤による副作用の多い治療法に代わる、患者の負担が少ない新治療法が編み出されていくことでしょう。
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