(更新日:2013年4月9日)
3月30日、東京大学内では開催された「原発災害と生物・人・地域社会」(主催:飯舘村放射能エコロジー研究会)において、福島県飯舘村をはじめとする、福島第一原発事故による放射性物質汚染地域で、動植物に多くの異常が見られることが明らかになりました。
筑波大大学院生命環境科学研究科のランディープ・ラクワール教授は、「半定量的RT−PCR法」と呼ばれる解析方法を用いて、特定の遺伝子の働きを観察することにより、飯舘村での低線量ガンマ線被曝が稲のさまざまな遺伝子の発現に影響していることを突き止めました。
また、動物に発現した異常に関しては、3名の研究者が、それぞれチョウ、鳥、サルの順に研究成果の発表を行いました。
琉球大学理学部の大瀧丈二准教授は、全国で日常的に見られる小型のチョウ、ヤマトシジミを、福島第一原発の周辺地域を含む東日本各地だけでなく、放射能の影響が皆無に近かった沖縄県からも採集して、外部被曝・内部被曝に関する実験を重ね、形態異常の有無ならびに生存率について詳細に検証しました。
大瀧准教授が行った研究からは、驚きの結果が明らかとなりました。
原発事故から2ヵ月後の2011年5月に採集したヤマトシジミを調べたところ、福島県内のヤマトシジミでは、他地域と比べて羽のサイズが小さい個体が明らかに多いことが判明したのです。
地面の放射線量と羽のサイズを比較した場合、放射線量の上昇と共に羽のサイズが小さくなる傾向が見られたのだそうです。
また、捕獲した個体の子どもでは、福島第一原発に近い地域ほど羽化までの日数が長くなる成長遅延の傾向が見られることもわかりました。
次に講演をおこなった東京大学大学院農学生命科学研究科石田健准教授は、「帰還困難区域」に指定されている浪江町赤宇木地区で2011年8月に捕獲した4羽の野生のウグイスのうちの1羽に、それまで類例がないような「おでき」ができていたと発表しました。
さらに、捕獲したウグイスの放射線量測定では、セシウム134および137を合わせて、最高約53万ベクレル/キログラムもの汚染レベルに達していることも明らかとなったのです。
続いて、羽山伸一・日本獣医生命科学大学教授が登壇し、「福島県の野生二ホンザルにおける放射性セシウムの被ばく状況と健康影響」というテーマで講演を行いました。
羽山教授は、野生ザル約3000頭近くが生息する福島市内(福島第一原発から約60キロメートル離れた地域)で、農作物被害対策のための個体数調整によって捕獲されたサルの筋肉に蓄積されたセシウム量を継続的に調査しました。
具体的には、2011年4月から2013年2月までに福島市内で捕獲された396頭のサルと、2012年に青森県で捕獲された29頭を比較しました。
その比較調査の結果、土壌汚染レベルが高い地域に生息するサルは、その体内のセシウム蓄積レベルも高い傾向にあることが判明したのです。
加えて、木の皮や芽を食べる機会が多く、土壌の舞い上がりやすい冬には、体内のセシウム濃度が上昇していることも明らかになりました。ちなみに、青森県のサルからは、セシウムは検出されませんでした。
さらに注目すべき点として羽山教授が紹介した事実は、避難指示区域にならなかった福島市内のサルの場合ですら、ニホンザルの正常範囲よりも、白血球数・赤血球数ともに減少していたことです。特に、白血球数は大幅に減少していたそうです。
とりわけ気になるのは、2011年3月の原発事故以降に生まれた子サル(0歳から1歳)の白血球数の減少です。汚染レベルと相関するように白血球の数が減っていることから、造血機能の損傷の疑いもあるとのこと。
現在の福島市内のサルの被曝状況はチェルノブイリで被曝した子どもたちとほぼ同レベルにあるため、チェルノブイリの子どもたちに発現した現象がニホンザルにも起こったことを明らかにする必要があると、羽山教授は指摘しています。
こうした放射能の動植物への影響に関する研究によって、被曝と人間の健康との関係が明らかになることが大いに期待されています。
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