原因が未だに完全に解明されていない統合失調症の発症に関係すると思われる物質が、ついに発見されたことがわかりました。
この物質の存在を発見したのは、米国ジョンズ・ホプキンズ大学の澤明教授や滋賀県立成人病センター所属の谷垣研究員などで、研究成果は、米国の科学アカデミー紀要に掲載されました。
研究グループが注目したのは、患者の3割以上が統合失調症を発症するといわれている染色体異常の疾患「22q11欠失症候群(22q11DS)」でした。
研究では、「22q11欠失症候群(22q11DS)」の同じ症状を示すノックアウトマウスを作り出し、中枢神経系を調べたところ、脳内の海馬や大脳皮質の細胞分布発達に異常があることが明らかとなったのです。
また、細胞分布の発達異常の原因が、ニューロン・シグナリング(海馬歯状回の発達に欠かせない物質)・たんぱく質「ケモカイン」の一種であるケモカイン受容体としてのリガンド12の現象であることも突き止められました。
また、10月31日には、金沢大学の橋本准教授らのグループが、統合失調症の患者の大脳皮質で、「KCNS3」という分子の動きが健常者に比べて平均23%減少していることがわかったことを発表しました。
「KCNS3」は、正常に活動しないことが認知機能の低下の原因となるパルブアルブミン陽性細胞の膜上に特異的に存在し、細胞の内外へ情報を伝達する役割を持っています。
今後、KCNS3の活性化を制御する方法が発見されれば、統合失調症治療が大きく前進すると考えられており、KCNS3を減らしたマウスによる実験が着々と進められています。
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